WBS 2020/12/14(月)

NEXTSTAGEコロナとの闘い
急転直下、GoTo全国停止

事態が動いたのは午後6時。

菅総理大臣は東京と名古屋を目的地にする旅行をGoToトラベルの対象から一時停止すると発表した上で、28日から年明け11日まで全国で一斉に提出すると表明しました。
予約を取り消した場合のキャンセル料は国が保証します。

その後午後7時半から記者団の取材に応じた菅総理。
言葉に抑揚を付けて国民に訴えた菅総理。
これまで一貫してGoToトラベルが感染拡大の原因だというエビデンスは存在しないと説明していました。

年末年始を含む期間にGoToトラベルを停止する意義を西村大臣はこう解説します。
「年末年始の企業は休む時期、飲食店も多くの店が休む。この時期に何としても下げていく。全国の移動が活発になれば感染が広がる恐れがあるわけです。ここで抑えようとした中で菅総理が決断をされた。」

急転直下GoTo全国停止、いったい何が

急転直下の方針転換の背景には何があったのでしょうか。
安倍前総理も含めて今日総理大臣として初めてコロナの医療現場を視察した菅総理。

東京都の小池知事、実は小池知事は昨日西村大臣と会談。
国は当初、東京都に対して今月25日までのGoTo停止を提案しましたが東京都は来月11日までを提案していました。
その提案が通った形となった小池知事。
政府の方針を受け午後9時過ぎから緊急の会見を開きました。
これまですれ違っていたように見えた政府の判断を評価しました。

さらに酒を提供する飲食店などに対する午後10時までの営業短縮要請について、今月17日までとしていた期間を年明けの来月11日までに延長することを決定。
全面的に応じた中小の事業者には協力金として一律100万円を支給します。

GoTo全国停止で旅行業界は

政府が打ち出した全国でのGoTo停止に波紋が広がっています。
こちらの旅行会社も今夜菅総理の発表に注目していました。
旅行会社アドベンチャーの春木さん。
年末年始を挟む期間のGoToの一斉停止の影響は少なくないと言います。
全国停止の報道が伝わると早速、全国各地からキャンセルに関する問い合わせが多くかかってきていました。

ただ春樹さんは政府の全国一斉停止の判断に理解を示します。
「エリアを細く絞ったりとか期間を絞ったりっていう風に小出しにされるとその都度対応が大変になってきてしまっていたので、思い切って行っていただく方があの現場の対応としてもしやすかった。」

GoTo一斉停止の影響は都内のホテルでも。
東京竹芝にある高級ホテル。
バルコニーから東京のウォーターフロントを一望できるこちらの部屋。
通常は一泊65000円以上しますが、GoToを利用すれば4万円台に。
4月のオープン以降コロナの影響を大きく受けましたが、GoToトラベルの効果によって年末年始の予約も順調に伸びていました。
今回の一斉停止の発表は大きな痛手だと言います。

GoTo全国停止で地方は?

地方自治体はどう受け止めたのか。
テレビ東京の取材に応じたのは広島県の湯崎知事です。
「GoToトラベルは継続するスタンスだった。かなり前進したと受け止めている。」

実は広島県一週間に確認された10万人あたりの新規感染者数は大阪・東京・北海道に続き4番目に多く感染が急拡大しています。
こうした状況に県は広島市をGoToトラベルから除外するよう政府に要請したばかりでした。

勝負の3週間変化はあったのか?

今からおよそ3週間前、政府は勝負の国民へ行動の自粛を促しました。
しかしこの3週間で変化はあったのでしょうか。
先週末の東京銀座、多くの人が行き交い、歩行者天国にも人が溢れました。

携帯電話の位置情報から人の動きを分析するデータで見ると銀座や渋谷など都内の繁華街の人出はほぼ横ばい。
変化はほとんどありません。

そして北海道についてはGoToトラベルから除外されている札幌市が横ばい。
近くの観光名所、小樽市を見ると先月に比べ2倍以上の人出となっています。

この間、全国の感染拡大は止まらず、7日間の平均で見ても勝負の3週間に入って以降増加し続けているのがわかります。
そして今日も全国の重症者は過去最多を更新、死者も47人と過去最多に並ぶ人数となりました。

GoTo方針転換の裏事情

GoToトラベルの全国的な一時停止には慎重な姿勢と見られていた菅総理になんですが、どうして一転して全国的な一時停止に踏み切ったのか聞きたいと思います。

篠原さん
基本的にはGoToトラベルの持つ経済効果、特に雇用の維持といったところを重視しておりまして、基本的にはこの全国的な停止には慎重な姿勢でした。
しかしこの週末になりまして状況が大きく変わったんです。
菅総理に大きな影響を与えたのは政府の分科会が東京や大阪などでのGoToトラベルの一時停止を強く提言したことです。
ただその提言を超えて、全国一斉停止にまで踏み込んだのはこの週末に行われた複数の世論調査で内閣支持率がいずれも40%近辺まで下落したことが影響しているとみられます。
下落幅は15ポイント前後と大幅でして民主党政権の菅内閣以来の下落幅だと報じるところもありました。
ある政権幹部は今夜テレビ東京の取材に対しまして、菅総理がGoToトラベル全国停止を決断した背景には支持率の大幅下落のあるとこのように明確に語りました。

政権内では菅総理のせいではない、コロナが政権の体力を奪っていると、総理を擁護する意見がないわけではありません。
ただ一方で身内の自民党内からはネット番組でガースーと自己紹介するほど世の中の空気が読めていないとか、今の政権の力量では致し方ないと言った辛辣な声も聞かれました。
こうした状況に野党からは自民党内で菅総理では選挙はできない、そういう声が表面化するのではないかといった見方が出始めています。
菅総理にとってはまさに危機的な状況だと言えまして、コロナ対策に全力を挙げる姿勢を示す意味でも今まで慎重だったGoToトラベルの全国的な停止に踏み切らざるを得なかったというのが実情のようです。

今回のこの判断に対しまして、自民党幹部で旅行業界に影響力を持つ幹部は次のように不快感を示しています。
「政府は勝手なことをしやがって、旅行に行くかどうかは賢い市民が判断するんだ。」
菅総理にとっては進むも地獄、退くも地獄といったところだといえそうです。
こうした党内の不協和音が今後の政権運営に影響を与える可能性もありそうです。

Q:全国での一斉停止というのは菅総理が一人で決断したことなんでしょうか、それとも周りの圧力があってのことだったんでしょうか?

菅総理は安倍総理と違って単独で決断するタイプの政治家ではないので、おそらくこれは西村大臣なり、周りの田村大臣なり、赤羽国土交通大臣の進言などもあったという風に思います。
決断する時、菅総理というのはわりと淡々としていたという風に話していました。
ブレーキをかけるんだったらきつめのブレーキかもしれないけども、菅総理は一つの視点だけじゃなくて複数の視点で考えられるんだというふうに総理周辺は語っていました。

コロナ対策分科会委員に聞く
GoTo停止なぜいま

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会に経済学者として参加していらっしゃいます東京財団政策研究所小林慶一郎さん。

ちょっと遅かったのかもしれませんけれども、こういう決断に至って本当に良かった、英断であったというふうに私は思います。
GoToを止めるとその後に経済効果非常に大きいですから、大きなコストというのもかかってしまいます。
そのためにこういろいろ迷いがあって時間がかかったのかもしれませんが、一旦感染者を押さえ込まないと長期的には経済のためにならないという風に私は思ってますので、今回は決断は非常に良かったというに思います。

感染症のを抑えるというだけであればもっと早くやるべきだったということかもしれない。
ただ観光業900万人、そして関係者の方々の生活というものがGoToで左右されるということですから、そこは大きなあの政治的な決断があった。

Q:特に経済学者として参加していらっしゃいますから非常に難しい部分あると思うんですがどういったことを重視して話を進めて来られましたか?

見通しがなかなか持てないというのが危機の難しいところで、感染症の方々と話してるうちに分科会の中では長期戦だというふうに考えがまとまってきてます。
11日の定例の中でも書いてるんですが、感染症に強い社会を作らなければいけないということを提言の中で書いてます。
これは結局これから1年・2年、ひょっとしたら数年という単位でこの感染症と付き合わなきゃいけないという長期戦になってくると。
そうだとするとビジネスモデルを今のままではいけないんだと。
飲食業や宿泊業、そのビジネスのあり方をこれから大きく変える。
産業の規模も変わってくるということを見据えながら、そのための補助金だとかあるいはそういう支援の制度を作って行ってもらいたい。
こういう話をしているところです。

経済支える政策、何が必要か

9月・10月に感染が落ち着いていた頃のあの水準がやはりちょっとまだ高すぎたんではないかってことが分科会で議論されています。
第二波が終わった後、感染が落ち着いていた時期、それでもまだ感染者の数が多すぎた。
むしろ6月、第一波が終わった後、その頃のレベルまで持っていくべきだった。
そうしないとなかなか感染症コントロールしながら経済を回していくということは難しいということかもしれません。

夏の間に医療の提供体制についてもしっかりあの状況をして行こうと計画が立てられてはいたんですね。
医療と検査両方増やしてこっていう計画があったんですけれども、なかなか現実にはお医者さんの人数とか看護者の人数は計画では増やせませんので、感染者の増加に追いつくような対応ができなかったということが悔やまれるところだと思います。

Q:今日現在の重傷者数は588人ですね、夏ぐらいの計画というのは具体的に3600人ぐらいの重症者に対応できるベッドを整えるって事だけじゃないですか。もしそうだったら、十分対応できたはずなんですが、なんでこんなことになっちゃったんですか?

そこはなかなか難しいですね。
お医者さんの人数がなかなか増やせなかったとか、あるいはその対応できるはずのベッドが実は確保できなかったとか、いろんな現実が計画と齟齬ができてしまってたという面があったと思います。
この点はちゃんと考えなければいけない。
今後に向けて、どういう風に医療提供体制を立てていくのかということはちゃんと考えなきゃいけない課題だと思いますね。

分科会でも指摘はしました。
そういう意味で厚生労働省に今週か来週あたりに、今後の病床の計画について発表される予定になっているということです。

GoToトラベル事業一時停止した場合に経済の押し上げ効果としましては年間で2兆円以上あるといわれています。
年間ですから今回の期間は短いものにはなりますが、この消費が押し下げられた分、これをどう支えていくかが課題ですよね。

感染を拡大させないためには経済活動を活発にするとなかなか難しいんで、そこ直接の補助金、給付金を家計に配る。
私は前から言ってるですが、事前に区別が難しいので事前に審査をしないでお金は欲しがってる人には誰にでもお金を配る。
その代わりに確定申告の時にもらいすぎてる人から取り返す。
というこういうような事後調整型の給付金という制度は、公平な制度として実現できるんじゃないかって、他の経済学者も各国でいろんな方が提案しているアイデアってそういうのがありますね。

Q:雇用を守るためにはどうすれば良いんでしょうか?

ビジネスモデルを変えなきゃいけないという風に考えれば、やはり一旦、元いた会社から外に出て、別の産業、別のビジネスに移っていくということを支えるべきだと。
企業に雇用調整助成金で休業者を支えさせるというやり方はこれ以上は難しいのかも知れない。
むしろ流動市場を拡充する。
新しい産業と労働者のマッチングをもっと支援していくという政策を拡充させるべきなんじゃないかという風に思っています。

一部ではそのベーシックインカムの考え方ありますけれども、誰にでも同じようにお金渡す。
ただ事後的に所得に応じて取り返す。
本当に困ってる人達には十分なお金が行き渡るような、そういう給付金の制度というのは早急に考えるべきなんだろうと思っています。

アメリカ、薬局でもワクチン接種へ

「安全で効果のあるワクチンをたった9ヶ月で届けることができる」

先週末、自らのTwitterに投稿した動画でこう切り出したトランプ大統領。
中西部ミシガン州にあるファイザーの施設では13日、ワクチンの発送作業が始まりました。
マイナス70度と表示された冷凍庫からワクチンを取り出し、超低温での輸送のため大量のドライアイスが詰め込まれていました。
全米636ヶ所の配送拠点に向けて第1弾となる290万回分の発送を開始しました。

13日早朝、ニューヨークのマンハッタンに近いFedExの配送拠点を訪れてみると、テレビ局が陣取って中継を行っています。
ワクチンへの期待の高さが伺えます。

取材中FedExの担当者から手渡されたのがケースに取り付けるICタグ。
GPSやBluetoothの機能が付いている為、輸送中の温度などを常に確認できるといいます。

アメリカでは医療機関だけではなく、街中の薬局などでもワクチンの接種が受けられます。
薬局大手のウォルグリーンは来年には9000を超える店舗で、小売大手のウォルマートは5000を超える店舗でワクチンの接種が受けられるよう準備を進めています。

75歳以上医療費2割枠新設

75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担は現在原則1割となっていますが、政府は2022年度の後半から単身世帯で年収200万円以上を対象に2割に引き上げるとする最終報告をまとめました。
また少子化に対応するため、不妊治療を2022年度から保険適用とすることを決めたほか、待機児童の解消に向けては2024年度末までに保育の受け皿を14万人分整備します。
政府はこの最初報告を明日にも閣議決定し、来年の通常国会に改正法案を提出する方針です。

バイデン氏勝利確定へ

アメリカ大統領選挙の勝者を正式に決めるための選挙人による投票が14日全米で行われます。
民主党のバイデン氏が当選に必要な過半数の選挙人を獲得する見通しです。
一方敗北を認めていないトランプ大統領は13日、ツイッターで絶対に諦めないとして改めて抵抗を続ける考えを示しました。

新型コロナ関連ニュース

今日国内で新たに確認された感染者数は1683人となりました。
新たな死亡者は47人でした。
重症者の数は588人と過去最多となっています。

3万円を超える高機能マスクが発表されました。
競泳水着素材メーカーの山本化学工業は特殊ゴムを使った高機能マスクを開発したと発表しました。
特殊ゴムを採用した自社開発のフィルターにナノファイバーでできたフィルターを入れて9層構造にしたもので、石灰石を主原料としている特殊ゴムが赤外線を放射し、口や鼻顔全体を温める機能もあるとしています。
価格は33000円で16日から全国の百貨店などで売り出します。

追加販売分については上乗せ率を引き下げます。
農林水産省はGoToイート食事券の追加販売分の上乗せ率をこれまでの25%から20%に引き下げると発表しました。
販売期限は来年5月中旬までで利用期限は6月末までとします。
現在販売している食事券についても利用期限を最長で来年6月末まで延長できるようにします。

外出自粛や働き方の変化で販売が苦戦しました。
今年売上を大きく減らした日用品を調査会社がまとめたところ、ワースト1位となったのは口紅で、売り上げが前の年の44%と激減していたことがわかりました。
在宅勤務やマスクの定着で使うことが減ったためとみられます。
この他、訪日客の大幅な減少を背景に、酔い止めや強心剤といった市販薬も売上を大きく減らしました。

青汁のキューサイ買収検討

健康食品のユーグレナが投資ファンドのアドバンテッジパートナーズなどと共同で、青汁で知られるキューサイを買収する方針で検討していることが明らかになりました。
全株を保有するコカコーラボトラーズジャパンホールディングスから株式を取得します。
ユーグレナはキューサイを買収することで、健康食品部門の収益力を高める狙いです。

景況感は2期連続改善

日銀は12月の短観、企業短期経済観測調査を発表し、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数は9月に実施した前回調査から17ポイント改善した-10でした。
2期連続の改善です。
経済活動の再開が本格化していて、中でも自動車は前回調査から48ポイントの改善となりました。
また大企業非製造業の業況判断指数は7ポイント改善した-5でした。
宿泊・飲食・サービスでは政府の観光支援事業GoToトラベルなどが改善に寄与しました。

コロナで変わる住宅ニーズ
窓を開けない換気

積水ハウスは今日、窓を開けずに室内の空気を清浄化する室内換気システムを発表しました。
コロナで変化した住宅への新たなニーズに対応したい考えです。
積水ハウスの実験施設で公開されたのは新たに発売された室内換気システムです。
天井に設置されています。
ウイルスなどの汚染物質をきれいにする空気清浄機能のほか、換気によって室内の温度が下がることを抑える機能が備わっています。
また玄関に排気孔を設けることで、空気はリビングルームなどから玄関に向かって流れる構造になっていて、生活空間をより綺麗な状態に保てるといいます。
住宅のオプションとして43万円から売り出します。

アメリカワクチン接種開始、株価は

今日の東京株式市場で投資家が注目したのはアメリカのワープスピード作戦です。
新型コロナワクチンの開発計画がついに接種の日を迎えました。
イギリスに続いてアメリカでも先ほどから接種が始まりました。
東京株式市場では経済回復への期待が広がり、機械や海運などの景気敏感株を中心に海外優勢となりました。
日経平均株価は一時200円以上上昇しましたが、国内では依然として感染拡大が続いていることもあり、終値は先週末より79円高い26732円でした。

ニューヨーク株式市場現在の値を確認します。
ダウは240ドル以上の上昇、過去最高値圏で推移してます。
ナスダックも123ポイントほど上昇しています。
円相場現在103円60銭台から70銭台で取引されています。

市場も好感

滝田さん
ポイントになるのは、アメリカでワープスピード作戦のワクチンの摂取が始まった。
運ぶのは当然なんですが、摂取の場所として薬局、そして小売、その店舗でも摂取できるんです。
しかも大量に摂取してるのが注目されますね。
日本だとお医者さんという法律上そういう建て付けになってるとみんな思ってるんですが、アメリカでは薬局で薬剤師さんが摂取できるんですね。
しかももう一点、軍隊が動員されてる大活躍してるわけですよね。
これがまさにワープスピード大作戦の本質なんです。
日本でも来年接種が始まる時にアメリカのモデルを念頭において事前に研究しといた方がいいと思うんですね。

GoTo全国一時停止影響は

滝田さん
コロナとの絡みで飲食・宿泊なんですよね。
12月は-66ということで9月に比べて若干改善したんですけれども、水深90Mから水深70Mになったからってちっとも助からないんですよ。
しかも3月の見通しも改善してなくて、さらにコロナの第3波ですから相当きついですね。
僕1番心配するのは中小零細の飲食・宿泊の方が、もうだめだと腰折れしちゃうことが一番心配なんです。
徹底的に資金繰りと事業支援をやってもらいたいと思います。