WBS 2021/7/29(木)

アメリカ好調なGDP
活発な個人消費が後押し

毎日少しずつ経済の再開が進んでいることを感じます。
ニューヨーク、マンハッタンの中心部に来ています。
この辺りはオフィスビルが立ち並ぶ場所で最近ではスーツ姿のニューヨーカーを見かける機会もぐっと増えました。
そして、人気の観光スポット、タイムズスクエア。
観光客の姿も少しずつ戻ってきています。
ただ、人の数はコロナ前の半分も戻っていない印象で、未だかつての賑わいには戻りません。

先ほど発表された4月から6月期の実質GDP国内総生産の速報値は前の期と比べて年率換算で6.5%のプラスとなりました。
市場予想を下回ったものの新型コロナ危機の前、2019年10月から12月期の水準を回復しました。
内訳を見ますとGDPの7割近くを占める個人消費は11.8%の高い成長を維持しています。

企業の設備投資の伸びは8%と前の期の12.9%から減速しました。
これは経済活動の再開に伴う様々なコストの上昇が影響してきている可能性があります。

アメリカ個人消費は大幅増も
2つのコストアップに課題

ニューヨークでは6月頃から飲食店が続々と再開しているんですが、ここでもコストも上昇が影を落とし始めています。

午前9時頃、店内には朝食を求める十数人の行列ができていました。
この店のオーナー77歳のジョン・ザバンティスさん、客足はコロナ前の4割近くまで回復したものの新たな悩みの種があると話します。
「すべてのコストが上がっている。すべてだよ、すべて。」

食材などの仕入れ価格の値上がりでコストが上昇。
しかし、ようやく戻ってきた客を繋ぎ止めるため商品の値上げはできないのが現状です。
さらにもう一つ、コスト増につながっているのが賃金。

掲載再開に伴い店員を募集しましたが人手不足でなかなか採用できず賃金を引き上げました。
材料費と人件費、二つのコストアップがアメリカ経済の先行きに影を落としています。

アメリカの金融大手バンクオブアメリカは2021年通期のGDP成長率の見通しを7%から6.5%に下方修正しました。
担当したエコノミストは物価上昇について
「物価上昇は年末まで続くだろう。物価は引き続き上昇し、高いインフレ率が続くがそれでも一過性のものだと考える。」

物価の上昇は一過性だと見ています。
一方、労働力不足の解消には時間がかかると指摘します。

「労働市場では地域のミスマッチが起きている。多くの仕事がある大都市から多くの人材が流出した。最近の新規感染者数の増加に対する懸念が高まっていて、働き手が労働市場に復帰するのがさらに遅れる可能性がある。」

こうしたなかアメリカの中央銀行にあたるFRB連邦準備理事会は28日、大規模な金融緩和の維持を決定。
パウエル議長は今後、複数回の会合で量的緩和の縮小に向けた議論を続ける考えを示しつつも、雇用の回復が十分でないと強調します。

アメリカ好調なGDP
デルタ株、中国経済で失速も

さらにアメリカ経済の先行きに重しとなりうる要素は国外にも。
一つは新興国の状況だとアメリカ経済に詳しい専門家は話します。

アメリカとの貿易量が多いメキシコや東南アジアなど新興国ではデルタ株が急拡大。
ベトナムでは先週末からハノイで厳格な社会隔離措置が開始。
タイバンコクでは今月中旬から夜間外出禁止が続きます。
こうした状況が長引けば新興国の内需が落ち込みアメリカからの輸出減少につながると指摘します。

さらに出口の見えない米中対立。
アメリカは中国向けの半導体輸出を制限しています。
中国の携帯大手Huaweiは今日、スマートフォンの新商品を発表しましたが最新の5Gの商品はゼロ。
その理由は、

ファーウェイ 消費者業務 余CEO
「この2年間、アメリカの4度にわたる制裁で弊社の5Gスマホは制限されてきた。今は4Gしか使えない。」

米中対立は中国へのダメージの方が大きく、アメリカ経済へのリスクはあまりないと木下氏は見ています。
しかしダメージを受けた中国の経済が減速すれば、対中輸出が減るという形で巡り巡ってアメリカのリスクとして跳ね返ってくる可能性もあります。

経済成長のハードルは?

原田さん

アメリカは7%成長、ただハードルがあります。
物価・賃金の上昇。
さらに量的緩和の縮小というハードルがある。
これは年末から年初と目されてますが市場の動揺を起こさずに実行できるかどうか、ここがポイントです。

中国は8.1%成長なんですけど、日本の場合はワクチンの接種が遅れたためにコロナのぬかるみからまだ脱出しきれてない。
しかも成長率はですから2.8%に下方修正されて、緊急事態宣言ですから個人消費が盛り上がるはずもないと、そういう状況です。

来年のIMFの予測なんですが、アメリカは7から4.9、中国は5.7、相当の減速をする。
日本の経済は国内が良くないけれど製造業が輸出などによって両国の経済に引っ張られて成長が支えられてきた。
ところが来年を考えた場合は消費の方が溜め込まれたものが日本の場合、爆発するような格好になってかなりの成長ができる。
国内需要を中心に変わってくんじゃないか。
ですから数字を見ても日本は来年上がるという風に見られている。

首都圏3県と大阪に宣言発令へ
コロナ慣れで効果は?

感染が急拡大している神奈川・埼玉・千葉の3県の知事は先ほど西村大臣とオンラインで会談し、政府に緊急事態宣言の発令を要請しました。
政府は要請のあった3県に加えて大阪府にも宣言を発令する方針を固め、期間は来月2日から31日までとしました。
既に宣言が出ている東京と沖縄も31日まで期間を延長する方針です。

感染拡大のたび、発令される宣言、その効果については疑問の声も。

長く続く外出自粛の要請に人々の警戒感は薄れ、人流は減っていません。
実際に宣言が発令中の東京の今日の新規感染者は3865人。

宣言の効果が出るとされる2週間が経過しても感染者は過去最多を更新し続けています。

東京2週間後4500人超?
行動制限だけは限界

東京では感染力が強いとされるデルタ株感染の割合が77%に達します。
一方で、ワクチンの接種率はまだ30%に満たないため、十分な抑制効果には至っていないとされています。
このまま感染拡大が続くと2週間後には1日当たりの感染者数は4500人を超えるとの試算も示されました。

感染状況を分析する東京大学の仲田准教授らの試算では、感染拡大が続いた場合、感染者数の数が8月2週目には東京都が確保する入院病床6000床を上回る見通しです。
中田准教授は行動制限だけを続けるのは限界があると指摘。
医療体制の強化こそが重要だと主張します。

「確保病床数、医療体制の強化っていうことをきちんとやらずに、片方だけに負担をかけ、バランス感覚を見直さなくてはいけない。納得してもらえない。」

世界初、ダンスプロリーグ
Dリーグへの期待

2024年のパリ五輪でブレイクダンスが正式種目に採用されるなど競技人口が年々増加しているダンスに注目しました。
1月には世界初のダンスのプロリーグが日本で開幕したんですがそこに企業が熱い視線を送っています。

世界初のダンスのプロリーグDリーグ
プロのダンサーで結成された9チームが競い合い日本一を決定します。
優勝賞金は3千万円。

スタジオでチームで集まって練習をしているということで訪ねてみました。
そして始まったのはパリオリンピックで正式種目に決定したブレイクダンスです。
所属するのはコーセーエイトロックス。
実はこのチームのスポンサーは化粧品会社のコーセーです。

Dリーグの9チームはコーセーの他、セガサミー、エイベックスなど全て企業が運営。
選手は企業とプロの契約を結んでいます。

Ryo-spinさんはこれまでダンススクールの講師として活動していました。
コロナ禍の中でレッスンが減少してしまいましたが、チームに所属するダンサーの給与は年俸制。
Dリーグが最低保証額を設定しています。

企業が熱い視線のワケ

チームを運営するコーセーの狙いはダンス世代の10代から20代の若年層の開拓だと言います。
フィギュアスケートなど数々のスポーツのスポンサーとなっているコーセーですが、チームの運営をするのは今回が初めてです。

女性の選手にはコーセーの化粧品を提供。
使用感をSNSに載せるとファンからリアクションがあるなどマーケティング効果を実感しています。

Dリーグのタイトルスポンサーを務めるのは第一生命です。
若年層との接点を増やしたいという狙いがあります。

スポーツのプロリーグ化
成功のカギは?

ではスポーツをプロリーグ化するとどんなメリットがあるのかスポーツビジネスの専門家は
「一般的に4大収入になります。チケット収入、スポンサー収入、放映権収入、グッズの収入。この20~30年の一つの結果として、プロ化した方が収益レベルは上がってると思います。」

ただ、全てのスポーツがプロリーグ化すれば成功するというわけではありません。
カギはリーグのリーダーシップだと言います。

スポーツビジネスに詳しい葦原さん
「メジャーリーグも30年前までは全然盛り上がっていませんでした。日米で大きな差が開いたのは、リーグが強いリーダーシップを発揮したからです。例えば放映権なんかもバラバラで売るんではなくて、まとめて売った方が高く売れる。高く売った分をチームに分配する仕組み。そのために重要なのはリーグが強い力を持って統制していくことが大きなポイントになります。」

ストリート系が熱い理由

原田さん
スケボーの選手は技をYouTubeで学んで自分の動画もアップしてると。
どの国にプレイヤーがいたとしても優れた技とかライバルを知ることができてグローバル。

二つ目は、中学の授業で必修化された、2012年からなんですけれど。
今、競技人口って600万とも言われてまして、サッカーや野球は7~800万と今そこに迫る勢いなんですよ。

最後このストリート系はヨコ型ということで、体育会系の縦型とは違う。
組織でいうと大企業とベンチャーの違いもちょっと似てると思うんですけれど、SNSでわかるように横で繋がって、例えば指導者がYouTubeとか、例えば。

令和の時代の盛り上がりっての組織のあり方と考えると興味深い。

公認されるっていうところがあるから実力主義かもしれませんね。

失われた消費はどこへ
巣ごもりでアート活況

東京駅前にある百貨店。
片隅に人だかりができています。
そこにはイギリスの人気アーティストバンクシーの作品が。
実はここで開かれているのは現代アートの展示即売会
日本や海外のアーティストの作品も1万円台から買うことができます。

新型コロナで海外や国内旅行に行けず、自粛ムードの今、行き場を失ったお金を使ってアートを買う人が増えています。
今回の展示会が始まって3週間ですが、すでに売り上げは2億円以上。

スニーカー投資にマネー流入

一方こちら、隣に住む会社員の高野さん。
出費が減り溜まったお金をある趣味に注ぎ込んでいます。
覗くとそこはスニーカーの山。
この一年で70足以上買いました。

2018年に発売された限定スニーカー、当時の価格は2万円程でしたが、ネットの取引でおよそ6倍、13万円で購入しました。
それでも損はしていないと感じているようです。
背景にあるのがスニーカーを個人間で取引する専用サイト。
13万円で買った高野さんのスニーカーはこの日、およそ23万円。

高野さんがよく使っているのはスニーカーの個人間取引で今急成長しているモノカブ
スニーカーを株式のように売買するサイトを運営していて取引されている商品は全て新品未使用です。

モノカブではまず売り手と買い手双方が売買したい希望価格をサイトで提示します。
株と同じように一番安い売値を提示した人と高い買値を提示した人で取引が成立。
その時の適正価格でスニーカーを売買するというものです。
コロナ禍の去年、モノカブの取引件数は1年前と比べて20倍に増加。
余ったお金で投資を目的にスニーカーを買う人は増えているのです。
コロナ禍でスニーカー取引の市場もさらに広がるかもしれません。

競合企業がモノカブ買収
今後はグローバル展開も

モノカブは今日、これまでライバルだった国内最大級のスニーカー取引サイトを運営する会社に買収されたことを発表しました。
今後は一緒にグローバル展開をしていくということなんです。

原田さん

スニーカーはニッチなものだと思うんですけれども、世界的な金融緩和のお金がそこに流れ込むと、とても深いマーケットを開拓して、世界規模の市場しかもM&Aが起きるっていうと超面白い話だと思う。

新型コロナ関連ニュース

新規感染が確認された人の数は10693人で過去最多となりました。
重症者の数は17人増え539人となっています。

家の中での子供の事故が過去5年で最も多くなっています。
nite製品評価技術基盤機構はコロナ禍の巣ごもりで多発している子供の事故の主だった事例を公開しました.
電池を飲み込んでしまった場合の再現実験に使用した鶏肉はわずか1時間半で、穴が開くなど身近に潜む危険への注意を促しています。

新型コロナワクチンの販売が業績を大きく押し上げました。
アメリカの製薬大手ファイザーは4月から6月までの3ヶ月間の決算で純利益が1年前に比べ59%増えたと発表しました。
各国政府がワクチン確保に動く中、コロナワクチンの販売予想を大きく上方修正しました。

空港の倉庫が一変しました。
二人がかりで運んでいる大きな箱の正体はベッドです。
タイの空港にある貨物倉庫をコロナ患者のための緊急病院として利用するため、ボランティアの人たちが急ピッチで準備をしています。
タイでは新規感染者が17669人を記録し、過去最多を更新しています。

出社の再会が一か月以上延期されます。
IT大手のGoogleがウイルスのデルタ株の感染拡大で社員の間に不安が広がっているとして、アメリカ国内の出社再開を9月から10月中旬に延期すると明らかにしました。
ワクチン接種を出社の条件とする方針も示しています。

トヨタ上半期世界首位
販売台数過去最多

トヨタ自動車が発表した今年上半期の世界販売台数はダイハツ工業と日野自動車を含めたグループ全体で、5467218台と1年前より31%増加し、過去最多となりました。
北米や中国で新型車の売れ行きが好調で、ドイツのフォルクスワーゲンを上回り世界首位です。
足元では半導体不足などによる部品調達の遅れも発生していて先行きに不透明感も出ています。

フェイスブック過去最高

アメリカのFacebookが発表した今年4月から6月までの決算は売上高が1年前より56%増え、290億7700万ドル、3兆2000億円となり四半期ベースでは過去最高となりました。
主力の広告事業が好調で、純利益もおよそ2倍となりました。
一方、アップルのプライバシー保護強化策などが広告事業に影響し、今後成長が鈍化する見通しも示しました。

三菱電機、国際認証停止

三菱電機は鉄道車両向け装置の検査不正があった長崎製作所について品質に関する国際規格の認証が一時停止されたと発表しました。
入札に参加できなくなるおそれがあるということです。
三菱電機は停止措置の早期解除に全力で取り組むとしています。

キリン新商品発表

キリンビバレッジは主力の緑茶飲料と紅茶飲料にキリンの独自素材プラズマ乳酸菌を加えた商品を10月に発売すると発表しました。
免疫機能を歌ったプラズマ乳酸菌入り飲料は今年の上半期、累計販売数量が前の年と比べておよそ5割増えたということです。

大塚家具、リフォーム参入

大塚家具が今月末からリフォーム事業に参入します。
ヤマダHDの傘下となり、去年から家電の取扱をしていますが、新たにリフォーム事業に参入することで家具や照明などの販売増加につなげる狙いです。
家具事業が厳しい中で家具と家電を組み合わせた住宅関連事業を強化するとしています。

ウォール街のご意見番に聞く
日本経済の不安材料は

市場関係者が注目する年初めのびっくり10大予想で知られるアメリカの投資会社ブラックストーングループのウィーン副会長がテレビ東京の単独インタビューに応じました。

ブラックストーングループ バイロン・ウィーン副会長
「今年初めS&P500は4500に上昇と予想した。野心的だったが人々は懸念していた。今、7月だが指数は4400だ。4500達成は楽観的に考えている。」

21年の10大びっくり予想で当時3700だったアメリカの株価指数S&P500が今年の後半には4500に上昇するとした予測に自信を示したウィーン副会長。
日本経済については当初慎重な見方でした。

「今年の初めには日本のことは心配していた。ワクチン接種は不十分で経済回復も予想通りにいかないだろうと。でも今はだいぶ改善している。」

ワクチン接種が進んだことや1ドルで110円台になり輸出が伸びたこと、アメリカをはじめとする世界経済の回復に後押しされる形で日本の見通しも明るくなってきたと話します。
残る懸念材料はと聞くと

「不安視しているのは内閣の支持率。さまざまな政策が実施され、結果が出てくれば変わるだろうが、今の支持率は心配だ。」

なぜ?博物館の電車が
シェアオフィスに

東急電鉄が運営する電車とバスの博物館。
こちらは東急の各路線で実際に使用されていた1931年製造の車両です。
当時の面影を残す車内に入ってみると、デスクワーク用の机が並び、席に座りながら仕事が出来るスペースが。
実は施設の一部をシェアオフィスに改装したのです。
Wi-Fiや電源も完備しました。
さらに飛行機のコックピットを眺められる一席限定のワークスペースも設けました。
今ある施設をうまく活用したため改装費用は少なく済み、その分利用料は手頃な価格設定に。
1時間200円、1日最大で1000円です。

しかしなぜ博物館をシェアオフィスに改装したのでしょうか。
「新型コロナウイルスの影響で約1年半、休館をしている状態でございました。サービスをお届けできないといったところ課題として考えておりました。遊休資産の活用は今後も考えていきたいと思っております。」

コロナが収束した後は再び博物館に戻す予定です。
シェアオフィスは来月1日から高校生以上が利用できます。

働き方改革は仕事の棚卸から

原田さん

東京23区で会社以外にオフィスとして使えるリモートで使える床面積が増えています。
まだどんどん増えると思います。
営業が苦しくてアイデアが閃いたってことだと思うんですが、親はリモートをやって、子供は隣の展示を見るって事もできるということらしいんです。

できる業務というものを見極めてリモートを進める必要があるということ。
やってる仕事が本当に必要なのかどうかの棚卸しをやるって事が一番大事だと思います。